贈与のルール
贈与による相続対策として、4回にわたって暦年贈与、孫への贈与、扶養義務者への贈与を紹介しました。
今回は改めて贈与のルールを確認しましょう。相続税の節税のための贈与は否認されないように、確実に、適切な金額で行います。
贈与は契約
贈与とは一体どのようなことを言うのでしょうか?「贈与」は「ただでものをあげる」というのが私たちの常識ですが、本来の贈与というのは民法上の贈与契約をいいます。契約というのは、お互いが納得して成立しますので、どちらかが知らないなどということはあり得ません。簡単に言うと、自分の持っているものを「ただであげる」といい、相手が「いただきます」と言って成立します。
例えば、赤ちゃんに預金をあげるよと言っても、もらった赤ちゃんは理解していないのですから、贈与は成立したとは言えないでしょう。
また、長女や次女には内緒で娘たちの名義に預金していたからといっても、贈与してたとはいえません。もらった者が、承知しており、自由に使うことができて初めて贈与が成立します。
赤ちゃんへの贈与は?
このように、赤ちゃんなど意思の確認のできない場合の贈与は成立しません。
ただし、民法においては、行為者が未成年である場合においては親権者が代理として法律行為をすることができます。したがって、意思表示のできない赤ちゃんであっても親が親権者となり、その代理として贈与契約を結び、物の引き渡しを受けて預かっておけば贈与は成立することになります。
このようなケースでは、特にその証拠をしっかり残すようにしてください。
例えば、贈与契約書に赤ちゃんの代わりに法定代理人として親が署名押印し、預かり管理しておき、孫が成人したらきちんと引き渡すといった方法を採ることになります。
贈与する側の意思もしっかりと
贈与する側の意思確認はどうでしょうか?贈与する人が正しい判断ができなくなっており、成年後見人制度により後見してもらっているような場合には、贈与行為そのものがなかったものとみなされます。
贈与の成立は贈与者がしっかりとした判断のもとに行い、もらう子供たちが自分で管理運用していることが前提条件なのです。
(参考文献)
・坪田晶子ほか「節税のための生前贈与」税理57巻13号92頁以下(2014年)