基礎控除を上回る価額の贈与 その2
暦年課税の場合、基礎控除110万円を超えると贈与税がかかるため、基礎控除の範囲内で贈与するケースが目立ちますが、長期的な対策がとれない場合などでは、贈与税を払っても生前贈与を進めた方が、相続税・贈与税トータルで税額を減らせる効果があります。
相続税・贈与税トータルの支払額を考える
多額の財産がある場合やすぐに相続が発生しそうな場合には、基礎控除110万円以内の贈与が必ずしも効果的な対策と言えない場合があります。
例えば、相続税が最高税率55%かかる場合に、財産1億円を想定します。年間110万円の贈与だと90年以上かかってしまいますが、年間1000万円の贈与だとわずか10年で終了します。もちろん、年間1000万円に対して実効税率17.7%の贈与税の負担がありますが、相続税の基礎控除を考慮しても、相続財産に対する相続税の実効税率よりは低くなるでしょう。
相続税の実効税率を確認するには
効果的な生前贈与による対策を講じるには、今相続が起こったら税額がいくらになるのか、相続税の税率は何%のゾーンになっているのかを把握することが肝要になります。
また、生前贈与加算の規定により、相続開始前3年以内の贈与については、相続財産に加算されるため、早い時期から贈与を開始し、生前贈与加算の対象とならない孫への贈与を活用すると効果的でしょう。
まとめ
もちろん、長期的に基礎控除110万円の範囲内でコツコツ贈与していく対策と比較し節税額が少額になることはあります。また、一般的に贈与税の税負担は重いとされています。したがって、相続税の税率を大幅に超える多額の贈与をすることはもちろん、逆効果となります。
相続税と贈与税の税率を比較して、贈与額を計算する必要がありますので、まずは現在の財産額がいくらなのか、きちんと把握することから始めましょう。
(参考文献)
・岩下忠吾『詳細相続税 資料収集・財産評価・申告書作成の実務』頁(日本法
令、2016年)