生命保険を活用した相続対策は4つ
前回は相続対策のうち、遺産分割の対策をご紹介しました。
今回のテーマは2 納税資金の対策です。
生命保険を活用した納税資金の対策
相続財産のほとんどが自宅などの不動産であり、現金や預金があまりない状態のまま相続が発生すると、相続税の納期限までに納税資金が準備できずやむを得ず相続財産の一部を売却するなど納税資金に困るケースが考えられます。
納税資金を確保するために比較的簡単な手続きとして生命保険への加入が有効です。想定される相続税額を正しく算出し、納税資金として生命保険でいくら確保するのか、保険料でいくら支払うのか、受取人を誰にするかなど事前にしっかり検討することが重要です。
効果
1 生命保険加入時に必要補償額が確保できるので、いつ相続が発生しても保険金を納税資金に充てることができます。
2 生命保険によって納税資金を確保できれば、他の相続財産の売却等をしなくて済ませることができます。
3 相続人が保険金を受けとった場合には保険金の非課税枠が使えます。
4 生命保険金は分割が可能な種類の財産であるため、代償分割の支払資金として利用するなど争族対
策にも有効です。
気をつけなければならないこと
納税資金の対策として生命保険を活用する場合には長生きしても死ぬまで一生涯保障の続く「終身保険」が適しています。健康でできるだけ若いうちに加入できるのが理想です。
また、支払方法にも期間を定めて保険料を払い終える有期払込みの形態が適しています。若いときには大きな保障で高齢になると補償額が小さくなるものには適しません。
生命保険の受取人を配偶者としている場合に、配偶者がその受け取った保険金を使って子の負担すべき相続税を代わりに納付することは配偶者から子への贈与となり贈与税が課されるおそれがあります。
そのため納税資金対策として保険に加入する場合には各人の相続税の負担額をあらかじめ想定したうえで受取人を決める必要があります。
財産を多く所有している被相続人に相続が発生し、配偶者である妻が財産を取得した場合にはその段階で配偶者である妻の二次相続を想定した対策が必要となってきます。
その際、一次相続のみを想定して被相続人のみが保険に加入していた場合などに、妻である配偶者にも保険が必要となってもその時点では年齢や健康上の理由から保険への加入が難しく加入できなくなっているおそれがあります。
そのことから妻もできるだけ若いうちから保険へ加入しておくなど一次相続だけでなく二次相続も考慮したうえで保険を活用することが大切です。
また、一次相続で相続税を抑えることだけを考えて配偶者へ財産を多く相続させ配偶者の税額軽減を受けていると、二次相続の際の子への財産の移転時に相続税が高くなってしまい結果的に一次相続、二次相続トータルでの相続税の負担が重くなる場合があります。